豊能障害者労働センター 取材レポート

 

豊能障害者労働センターの新しい取り組み

「ボタンがつなぐ 人と布プロジェクト『クリマバッグ』(以下、人と布プロジェクト)」

 

(クリマバッグ)
(クリマバッグ)

 

人と布プロジェクトとは、被災地支援と障害者の労働支援を掛け合わせた企画で、東アフリカの布を宮城県石巻市でかばんとして縫製し、そこに福島県須賀川市の障害者事業所の方々が作った可愛らしいボタンが合体します。

「クリマ」とは、スワヒリ語で「耕す」という意味。耕されるのは、無論、畑ではなく、「人間同士の希望」であるようです。

ボタンがそれぞれの土地の人や手仕事をつなぎ希望を耕していくという願いをこめて名付けられたとのこと。

 

おや? 東アフリカの布を宮城県で縫製してボタンは福島県の事業所で・・・

豊能障害者労働センターの出番はどこ??

 

はい、そんな疑問にお答えするべく、豊能障害者労働センターの田岡さんにお話しを伺いました。

 

豊能障害者労働センターはクリマバッグの製造過程において、生地の色止めをして干す、アイロンがけ、裁断、ボタン穴の研磨、ボタンの縫い付け、袋入れ作業という工程を分担。また、クリマバッグの通信販売という役割を担っています。

(生地の裁断)
(生地の裁断)
(ボタンは穴の中までしっかり研磨)
(ボタンは穴の中までしっかり研磨)

 

豊能障害者労働センターでは阪神大震災以降ずっと被災地支援を事業として行われており、東北大震災でも直後から支援を続けていますが、そろそろ現地ではお金や物資ではなく生活面のサポートが必要になってきている。ではどんなサポートができるのか、何がいいかと模索する中でつながってきたのが、福島の障害者福祉施設「須賀川共労育成園」の手づくり木ボタン、石巻の着物リメイクサークル「うっ布2(うっふっふ)」、そして、大阪大学の学生NGOでケニアの貧困やHIVに苦しむシングルマザーの経済支援を行っている「トゥマイニ・ニュンバーニ」でした。東アフリカの「カンガ」「キテンゲ」の布は、天然素材でデザインや色づかいが力強く綺麗なので、このプロジェクトで探していた生地のイメージにぴったりでした。人と布プロジェクトはこうして始まりました。

人と布プロジェクトがつなぐのは人と人。クリマバッグが作られ売られる過程で人から人へ、そしてそれを手にした人たちも、被災地やケニア、障害など困難があるなかで頑張っている人たちのことをを想い、人々の希望がつながれていきます。

(様々なボタン。デザインはトゥマイニ・ニュンバーニ)
(様々なボタン。デザインはトゥマイニ・ニュンバーニ)

 

では、このようなプロジェクトを企画して、地域だけではなく地球の裏側まで、障害のあるなしも乗り越えてつないでしまった豊能障害者労働センターとは、いったいどのようなところなのでしょうか。

 

豊能障害者労働センターの始まりは約35年前、大阪府箕面市で養護学校を卒業した脳性麻痺の少年が、「行き場がない」と訴えたことから、古い民家を事務所にし、障害者2人を含む6人で、粉石けんの袋詰め、販売を始めました。現在は障害者36名を含む50人が、リサイクル事業としてショップ4店舗を運営し、オリジナルTシャツの通信販売事業、飲食店、点訳事業等を行なっています。

このセンターは、一般的にイメージされる健常者の職員が障害者をサポートする福祉サービスではなく、障害のあるなしに関わらず皆が対等に働き、給料を作り出しています。

 

なぜ障害のある方々が集まる組織で、このようなことが可能なのか。それは豊能障害者労働センターの掲げる「2つの対等」にあるそうです。

 

まず1つは、「金銭的対等」。

箕面市の障害者事業所制度は、一般的な障害者の福祉的就労制度とは違い、健常者職員ではなく障害者職員の給料に助成金のほとんどが費やされます。加えて、それぞれの給料は本人の生活レベルに応じて支払われるため、仕事の出来不出来で給料が変動することはありません。そのため、「障害者だから」という理由で、給料が低くなるということはないのです。

一方、健常者職員の賃金の殆どは自分たちの事業収益から捻出されます。それゆえ、障害者職員もキッチリ働いて稼がなくては、健常者の給料が保障されないという仕組みなのです。

そのため、健常者、障害者双方の協力や歩み寄りが運営の必須条件になります。

皆で協働していくためには、皆が「対等」で業務に関わることが必要です。ゆえに、事業所役員の半分を障害者スタッフが占め、各事業の企画会議にももちろん障害者職員が参加します。センターを皆で運営していくという、「職員としての対等」がここにはあります。

(作業に勤しむ職員の皆さん)
(作業に勤しむ職員の皆さん)

 

これら二つの「対等」、そしてそれによって職員それぞれの「暮らし」「働き」が確保されているからこそ、1人の人間として互いに意見を言い合い、時には対立をしながら、このセンター全体が成長していくことができるのです。ここでは、皆がコミュニケーションを取りながら、作業に取り組む姿が印象的でした。

(商品購入者に届けられる直筆のお礼メッセージ)
(商品購入者に届けられる直筆のお礼メッセージ)

 

「彼らと一緒に働くのは、とても面白い」

「障害者だからって遠慮しません。喧嘩もします」

「ダメなことはダメ!とちゃんと言います」と、田岡さん。

 

元々、障害者の労働問題に関心があったわけではなく、前職は工業デザインのお仕事で忙しい日々を過ごし、空を見上げることすら忘れていた田岡さんでしたが、「星がきれいね」と素朴な会話で空を見上げることを思いださせてくれたのは、障害をもつ彼ら。

 

「自分が気づかないことを気づかせてくれる存在」。

 

忙しさから忘れてしまう日常の素晴らしさや、自分が働く目的などを考え込んでしまう時、いつもヒントをくれるのは他でもない彼らだそうです。

 

それは、「何かを教えてあげないと、お世話もしてあげないと」という「指導員」と「障害者」という関係からは見えてこない絆のようです。

(インタビューに応じてくださった田岡さん)
(インタビューに応じてくださった田岡さん)

 

豊能障害者労働センターに関する詳しい情報は以下のホームページにアクセスを!!

http://www.tumiki.jp/index.html

 

クリマバッグが欲しい!という方は下記の通販サイト、または、11月26日(日)みのお市民活動センターのイベント「みのおNPOフェスタ」の出展ブースへお越しください。NPOフェスタなら現物を見てご購入いただけます。

■通販サイト「積木屋」

http://tumiki.com/?pid=117450971

■みのおNPOフェスタ

https://www.facebook.com/events/233477450492397/

 

こちらの動画も要チェック!

■クリマバッグ「豊能障害者労働センターの挑戦」

https://www.youtube.com/watch?v=jQLZdkZKO1Q

 

 

(レポート:唐﨑翔太)