シニア劇団と侮るなかれ! NYブロードウェイでも公演した劇団「すずしろ」
箕面を中心に全国区で活躍している劇団「すずしろ」は、団員が全員60歳以上の劇団です。しかも、団員の半数は演劇未経験者で、入団にはオーディションもなく、やる気と来れる元気があればいいそうです。しかし、演劇指導はプロの演出家が行い、かなり本格的なレベルです。全員60歳以上なのに、子どもの役やセーラー服姿だったりすると「ええ!?」と思ってしまうのですが、劇の設定がしっかりしているのと演技力で、これが不思議と違和感がないのです。
この劇団の立ち上げは今から10数年前、箕面市の市民講座「60歳からの演劇入門」がきっかけ。立ち上げ当初から代表をされている秋田さんは、ご自身が歳をとるにつれ、60歳以上の人たちの劇団があれば面白いと思っていたので、講座を企画して箕面市に持ち込みました。ただシニアが集まって演劇を学ぶので終わりではなく、最初から劇団をつくる目的で60歳以上の演劇に関心のある人たちを集めたかったそうです。
こうして立ち上がった劇団すずしろは、当時16人のメンバーでNYブロードウェイ公演を目指します。NY公演を言い出したのは指導者である演出家の倉田操さん(ちなみに60歳未満の若い方です)。倉田さんいわく、「私自身が劇団すずしろの稽古で元気をもらえている。ショービジネスではなく彼らはただ純粋に演劇を楽しんでいる。私のように彼らから元気をもらえる人も多いのではないかと感じたので、メディアに取り上げてもらえないか知人に相談したら、単なるシニア劇団では面白くないと言われた。そこで、彼らに『どうせなら、でっかい夢をみませんか』とNY公演を提案した。はじめは『そんなん無理や』と言っていた者も、どうなるかわからないけど目指すのは自由だからと、だんだんやる気になってきて「目指せ!ブロードウェイ」ということになった。」
そこからは、NY公演実現に向けて、英語の台詞の猛特訓の日々。「発音も完璧に!と倉田さんの指導が手厳しかったんです」と笑いながら語る秋田さん。しかし、一番の問題はお金の面で、「老後の貯蓄からだせる自己負担は30万円まで。30万⒈円やったら無理!」として、カンパやバザーなどで資金集め。その頑張りと、国内外で多方面の協力者も多く名乗りを挙げてくださったことでNY公演は実現しました。チケットも売り切れ大好評だったそうです。「このことを専門家たちに、通常は東京公演をして次に海外へという流れになるのにと言われますが、私たちは人生の残り時間が少ないから間をすっ飛ばしてNYに行ったんです(笑)」と団員たち。
劇団すずしろの活動は、地域の高齢者の社会参加のモデルケースに取り上げられることが多いのですが、秋田さんは、「そういうミッションはあとからついてきた。今は意識して活動している。歳をとると過去の人生や経験が邪魔して人との折り合いをつけるのが難しくなることが多い。演劇は仲間と折り合いをつけていかなアカンし、みんなと一緒やから頑張れる。歳いってこういう仲間がいるってことがいい」とのこと。演劇経験がなく入団した方たちに入団のきっかけを伺うと、
「病気になって『人生もったいない』『生まれ変わったら女優になろう』と思ったから」
「死ぬ前にいろいろ経験していい人生だったと思いたい」
「1日中家に居て誰とも話さないという状況がアカンと思った」
「定年退職してずっと家に居たら、このまま枯れてしまうと心配した奥さんから劇団のチラシを渡されて『入りなさい』と言われた」
など様々ですが、人生の残り時間を有意義に過ごしたいという想いが伝わりました。これは何もシニアに限ったことではなく、若い人も中年も熟年も皆、人生は一度きり。やりたいと思うことをやれるチャンスがあるのなら、何事も諦めずに挑戦する方がいいと感じました。
活動するうえで何かこだわりがあるかを伺うと、「あまりお金をかけないこと。お金持ちじゃない高齢者にも開かれた場所であるということ。今は舞台セットなどは外注もしているけれど、劇団がスタートした頃は衣装も何もかも全て団員がつくっていた。みんな何かしら経験を積んできているから何かしらできて役にたつんです」と。確かに演劇をしたり習ったりするのに一般的には結構お金がかかります。そういう点で劇団すずしろは、庶民の財布にもやさしい劇団なのです。
劇団すずしろに入団できるのは60歳以上という条件がありますが、大道具づくりや裏方などの関係者は年齢制限がないそうです。もし、興味があって入団や裏方で関わりたいという方は、お問い合わせてしてみてください。
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■ブログサイト:劇団「すずしろ」日記
http://suzushirodaikon.seesaa.net/
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■ドキュメンタリー映画「晴れ舞台はブロードウェイで」
(レポート:MH)