スマイルファクトリー 取材レポート

 

『不登校の小中学生が過去最多の14万人超え』

 

(フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com))
(フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com))

 

 文部科学省の平成29年度調査によると、不登校児童生徒数は14万4031人で過去最多を記録しました。また、昨年度NHKが中学生を対象に行った調査では、登校はしても教室に入らない・授業に参加していないといった、学校に馴染めない隠れ不登校の児童は、推計74万人だといわれています。

 

 では、そのような子どもたちへの救いの手は? 

 

 そのひとつに、フリースクールがあります。フリースクールとは、不登校、引きこもり、軽度の発達障害など何らかの理由で学校に行けなくなった子どもたちを受け入れる教育機関です。個人やNPO法人など民間が経営しており、公的な学校ではないため規模や形態は様々ですが、その数は全国に約470ヶ所あります。主な目的は、個別学習のほかに、体験学習、人との触れ合いなどを通して傷ついた心を癒し、復帰や自立を促すことです。

 

 では、フリースクールに通うと、公的な教育の修了課程はどうなるのか?

 

 2017年に施行された「教育機会確保法」という国の制度により、自治体が認めればフリースクールなど学校外での学習を義務教育として認められることになりました。これによって、義務教育課程の子どもであれば、もともと通っていた小中学校に在籍したまま通うことが可能になりました。

 

 フリースクールで子どもたちがどのように過ごしているのか、もっとよく知るため、今回の取材では、池田市にある「スマイルファクトリー」を訪れ、校長の白井智子さんにお話を伺いました。

 

 

 2006年に開校されたスマイルファクトリーは、全国でも珍しい公設民営の学校です。運営しているのは、全国規模で多角的に地域コミュニティの課題解決に取り組むNPO法人トイボックス。今は閉校となった旧伏尾台小学校を再活用し、小中学生から高校生までを受け入れています。1日平均30~40人が通学しており、先生1人にあたり生徒3~4人の割合。通学が難しい子どもの個別相談や家庭訪問にも対応しているそうです。スクーリングは祝日を除き毎週水曜日から土曜日の10時から15時で、1日の流れは朝のミーティングに始まり、午前中は個別学習、午後は体験学習、そして帰りのミーティングの後に帰宅という流れです。個別学習は子どもたちそれぞれにあった教材とペースで進められ、体験学習は国語、算数、理科、社会科、音楽、体育、美術、家庭科など様々な内容で子どもたちがこれからの人生に役立つことを皆で楽しみながら学びます。

 

 

「子どもたちに、いろんな世界の入り口を見せてあげたい。体験学習は子どもたちの適性を確かめることができる。子ども同士トラブルになることもあるけれど、それも教材になります。私たち大人は、そこにガッツリ介入して加害者と被害者の両方をケアします。子どもたちが怒りや悲しみなどの感情のコントロールのしかたを学び、乗り越えるという経験が成長につながります。」と白井さん。

 

  子どもたちが抱える様々な問題に寄り添い、子どもたちにとって安心できる場所、元気になれる場所となる。子どもたちが傷ついた心を癒し、失った自信を取り戻し、再び道を歩みだす。そういったサポートが、ここ、スマイルファクトリーではとても丁寧に行われています。

 

  お話を聞いていると、ここの居心地が良くてずっと通い続けたいと思ってしまうのではないかと思ったので実際にはどうかと尋ねてみると、それはないと答えられました。子どもたちは、ここで、自分の得意なこと、苦手なこと、将来の仕事など早い段階でキャリアについて考える機会を得られる。先に卒業した子や学校に復帰した子など身近にロールモデルがいるので、みな中学生ぐらいになれば、どのタイミングではばたいていくかを考えているとのこと。卒業後の進路は普通に進学、就職する人が大半で、経験上、福祉や教育分野に進む割合も多いそうです。

 

 

 ひとしきりお話を伺った後は校内を見学させていただきました。元々小学校というだけあって、たくさんの教室に体育館や音楽室もあり充実しています。教室のひとつを活用した「スマイルカフェ」という地域の人たちとの交流の場もありました。取材の日は残念ながらオープンしていませんでしたが、木製のカウンターやキッチンがあり、おしゃれなカフェでした。スマイルファクトリーでは、このように地域との交流も大事にしていて、地域の人たちが応援団として、年間を通じて様々な行事や課外学習に協力して下さっているそうです。こういったところにもスマイルファクトリーの魅力を感じました。

 

 

 取材を終えて、私は既存の学校という教育システムはすでに限界にきているのではないかと感じました。羽生善治さんが著書「決断力」で子どもに対し「本当に好きなこと、興味を持てること、打ち込めるものが見つけられる環境を与えてやることが大切だ」と語ったことをふと思い出しました。

 

 2015年の文科省の実態調査ではフリースクールに通う小中学生は約4000人。フリースクールなど子どもを支援するところとどこにもつながっていない子がまだまだたくさんいるのではないでしょうか。教育機会確保法が施行され、フリースクールとの連携は緒についたばかり。不登校で子どもが苦しまない状況をつくるためにも早急な支援が望まれます。

 

 現在、スマイルファクトリーには全国から視察があり、自治体からの誘致や引き合いの声も多くかかっているとのこと。今後の活動に要注目、期待大です!

 

 NPO法人トイボックスは、スマイルファクトリーの他にも「子どもと地域」をテーマに様々な活動をされています。関心ある方はHPをご覧ください。

 

■ NPO法人トイボックス https://www.npotoybox.jp/toybox/

 

 

(レポート:ST)